映画“スポットライト”の真実!カトリック教会の性的虐待事件(日本編)

レイプや性的虐待に於いて、犯罪の性質上多くの被害者は口をつぐみ公にすることを拒みます。ともすれば精神的にヅタヅタにされてしまいかねないからです。カトリック教会ではかなりの期間、司祭による性的虐待が行われていました。被害者は孤児院の児童や神学校の生徒、修道者などの共同生活を送る者が多かったのです。何故長きに渡って公にされなかったのか、真実を辿っていきます。

日本でもカトリック神父が園児に性的虐待!

日本でもカトリック神父が園児に性的虐待!
東京サレジオ学園

2002年にボストングローブ紙のスポットライトチームがスクープしたのをきっかけに、日本の司教団も同年に聖職者による子どもへの性虐待の事例の調査を行いました。その結果、日本の中でも性的虐待をされていたことが判明したのです。

これを受けて日本のカトリック教会は「子どもへの性的虐待に関する司教メッセージ」を発表。

「性虐待は、無防備な子どものからだ、たましいに傷を負わせる恐ろしい犯罪であること、日本でも不幸にして聖職者、修道者による性虐待があったことが判明したこと、司教団として十分な責任を果たして来なかったことを反省し、被害者の方々には誠実に対応するとともに、加害者である聖職者、修道者には厳正に対処すること、子どもの人権擁護のための活動、またかれらの育成に携わる学校・施設で働く者、および聖職者、修道者の養成に力を注ぐこと、このような事件が起らないように自らを正し、教会の刷新に励んでいくこと」

https://www.cbcj.catholic.jp/2016/12/14/11033/

この発表の後に、『教会が子どもの権利を守るために~聖職者による子どもへの性虐待に対応するためのマニュアル』を刊行し、司教のための対応ガイドラインと共に発表しました。

カトリック司祭による性的虐待被害者が実名で名乗り出た

カトリック司祭による性的虐待被害者が実名で名乗り出た
50年前被害を受けた竹中勝美氏

2019年3月19日発売の「文芸春秋」で、当時イタリアに本部を置く世界規模の修道会が、東京の小平市で運営する児童養護施設「東京サレジオ学園」に50年以上前に在園していた竹中勝美氏(当時小学4年生)が、その時在籍していた園長のトマス・マンハルド神父に1年以上に渡って性的被害を受けていたことを語りました。

竹中さんは児童養護施設時代、勉強ができ職員に可愛がられていたため、他の愛いに飢えた施設の児童にいじめを受けていました。その時相談にのってくれた神父がトマス・マンハルド神父だったのです。しかし、逆に性てき虐待を受ける結果になり、その記憶を封印してしまいました。

キリスト教とはあまり縁のない日本。対岸の火事のように受け止めていた事件でしたが、その炎は日本という狭い国家にも飛び火していたのでした。

2002年から調査を始めた日本カトリック教会は、アンケートの結果5人の性的被害者がいることを把握していました。しかし、その時は具体的な措置をとらなかったそうで、2019年4月になってようやく踏み込んだ調査を検討することを示唆したと言います。

そんな中、勇気を振り絞って告白した竹中勝美氏に、多くのメールやツイートが寄せられたそうです。更に、「組織にメスを入れるときだ」や「被害にあわれた方々が癒されること、加害者が誠実に犯した過ちを認め謝罪することが必要です」という聖職者たちからのメッセージもありました。

竹中勝美氏以外にも2名の被害者が

竹中勝美氏以外にも2名の被害者が
当時の竹中勝美氏とトマス・マンハルド神父

文芸春秋の記者は、この記事を掲載すると同時に、東京サレジオ学園に対して「竹中氏への虐待を認めるか」、「竹中氏以外にも被害者はいたのか(調査はしたのか)」という主旨の質問状を送っていたと言います。

その後東京サレジオ学園から回答書が届き、竹中氏以外にも2人の男児が性的被害を受けていたことを訴えていたそうです。その回答書に対してサレジオ学園側に「トマス・マンハルド神父の性的虐待は本当のことなのか」を質問したということ。

そその問いに対してサレジオ学園では、虐待されたとされる時期からは既に50年以上が経過し、トマス・マンハルド神父は病気を理由に帰国して、1986年、西ドイツ(当時)のロッテンブーフの修道院で膀胱癌で亡くなっているため、事実を知っている神父本人がいないので立証困難としています。

20年経過してフラッシュバックで蘇った悲劇

竹中さんは、性的虐待を受けた直後から結婚するまでの20年間、この悲劇は記憶の隅に隠して生活してきたということでした。辛い記憶やストレスの大きくかかった出来事などを脳の別の場所に保管してしまう解離性健忘だと思われます。

せっかく嫌な記憶を閉じ込めていましたが、自身の子供をお風呂に入れている時にフラッシュバックにより性的虐待の記憶が蘇ったと言います。そのことにより、竹中さんはサレジオ学園に対して性的被害の訴えを申し立て、調査するよう依頼しています。

しかし学園側は、「確認できません」という回答をしてきたということ。また、新たに被害者として名乗りを上げた2人の男性についても、性的虐待については確認できなかったとしていました。

日本カトリック教会では、ボストングローブ紙のスクープ後、性的虐待に関しては真摯に対応していきたい旨をメッセージで公表していましたが、被害者が名乗りを上げた時点でも、過去の虐待について何らの行動も起こしていなかったのでしょうか。そうであれば、これから事実関係を明らかにすることに取り組んでいただきたいものです。

性被害者の集会を開き「カトリック神父による性虐待を許さない会」を発足

性被害者の集会を開き「カトリック神父による性虐待を許さない会」を発足

2020年6月21日に、カトリック教会司祭の性的虐待被害者の信徒らが長崎市内で集会を開きました。そこには竹中勝美さんを含む3名の男女が訪れ、体験談を打ち明けました。

被害者の女性の一人は、2018年5月に親しくしていた神父に性被害を受け、その後心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患ったということ。そして現在も投薬による治療を受けているとのことです。

また、宮城県の鈴木ハルミさんは、24歳の時に夫のDVに苦しんで相談した神父から性的虐待を受けたと告白。その時から人間への信頼性は失われ、ギャンブルや酒に溺れて、自分自身を傷つけてしまったということ。

その時の心境は「私は『けがれている。死んだ方がいい』と思っていた」「真実を話すには苦しくて、おぞましくて。記憶を封印しないと生きていけなかった」と語っていました。

性的被害者は「自分が悪い」と思ってしまうことが通例のようで、宗教が絡んでしまうと、その思いが強くなると言います。

このような経験談を踏まえて、二度と子供たちにこのような思いをさせてはならないと、立ち上げたのが「カトリック神父による性虐待を許さない会」です。今後は被害者の自助グループを主として運営していき、カトリック教会に対して対策を求めていくとしています。

参考にさせていただいた記事

映画“スポットライト”の真実!カトリック教会の性的虐待事件(アメリカ合衆国編)>>

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